“緑のダム”の未来が危ない

森林の荒廃が、自然災害を拡大する

日本の国土の約3分の2は森林地域で、
古くから森林資源を建築資材や薪炭等の燃料として活用してきました。
建造物の建設が盛んになった江戸時代には、全国で伐採が進んだことで、
森林資源が枯渇し、土砂の流出など災害が深刻化しました。
以降、「山の衰えは則ち国の衰えなり。」と、
需要に応じて木材生産のためにスギやヒノキの森が造林されるようになりました。
それら木材は、明治期に入ると、西欧文明の流入にともない、
工事の足場や杭、鉄道の枕木、紙の原料など様々な用途に使われるようになりました。
一方で、森林伐採により国内各地で森林破壊が深刻化した時期もありました。
戦前・戦中、さらには戦後復興が活発化するとさらに木材需要が増え、森林が大量に伐採されました。
再び森林が荒廃すると、自然災害による被害が目立つようになります。
1947年の日本を襲ったカスリーン台風の被害は甚大で、利根川上流域に多くの降水をもたらし、山腹崩壊に伴う土石流の発生や河川の氾濫により、利根川流域の1都5県で死者数1,100名、家屋の浸水303,160戸、家屋倒半壊31,381戸、田畑の浸水176,789haの被害がありました。
群馬県桐生市内をみると、じつに全戸の63%が浸水被害にあいました。

薄暗く荒れ果てた森が広がりつつある

生活と共にある森林がいま危機を迎えています。
要因は山間部の過疎化、つまりは山をもつオーナーの高齢化です。
さらには、戦後安価な海外資材の流入したことで、国産材の値段が暴落。
小規模オーナーの山林は、間伐などの必要な手入れが難しくなりました。
間伐がされないと、地面に適量の光があたらないため、暗く湿った森林では下草が生えなくなり、土が剥き出しになります。
樹木の育成も遅れ、雨が地面に効率的に浸透せず、雨が降るたびに土砂が流出するということも起こりえます。
気候変動が世界的な課題になりつつある昨今、弱った地盤に巨大化した台風による風雨が打ちつけたことを想定すると、その被害は計り知れません。
源流域の過疎・高齢化が進み、気候が大変動する現代、私たちにいま何ができるでしょう。
一人でも多くの人にその実情を知ってもらうこと。
そして、山や水、自然の魅力にふれ、その自然と、地球で暮らす同志として、ともに未来を作っていくことが必要なのではないでしょうか。