茶、和紙、炭、自らの暮らしをつくってきた源流の風景
織物の街桐生を南北に走る桐生川上流に位置する山紫水明な梅田町。
この地は自給自足の文化が強く、日常の食料はさることながら、お茶や紙も地域で作っていました。
今は石垣しか残っていない最奥の上藤生集落では電気まで自給していたそうです。
梅田町でも、高齢になり集落を去るお年寄りが多く、これまで管理していた畑とその周辺のお茶の管理ができなくなってきています。
それでも毎年5月の新茶のシーズンになると昔飲んでいたお茶を飲みたいという思いでお茶摘みをして、摘んだ茶葉を製茶所に持っていく姿を見ます。
そんな方たちとお話をしていて良く聞くのは、集落ごとに炭を焚いて手揉みで製茶をしていたからお茶の香りがすごくて酔いそうだったとか、村の女性たちは日程を決めるとみんなでお茶摘みの手伝いに行っていたとか、お茶摘みの休憩時間には持ち寄った手作りの山椒の佃煮や漬物の味比べが始まるとか…お茶に対するたくさんの思い出をお話してくれます。
そして、摘み取った茶葉は集落ごとに各家庭が一年間飲むお茶と、親戚やお世話になっている方にプレゼントする分を製茶していました。
遠くに引っ越した兄弟、嫁いでいった姉妹、お嫁さんの実家…新茶が来るのを楽しみにしている親戚も多かったそうです。こんな風に積み上げてきた習慣、風習が、時代と共に消えています。
山間にひっそりと残る”梅田茶”の文化を次世代へ
近年では緑茶を飲む人たちが減ってきていることや、急須を使ってお茶を飲むというライフスタイルが消えつつあることもあり、これまでように梅田茶をたくさん親戚に配ることも少なくなってきて、製茶したお茶を廃棄せざるを得ない家庭も出てきています。
そのような中、昔から地元の味として作ってきた梅田茶を残していこうと、梅田茶生産組合が動き出しました。
梅田茶を巡る風習や習慣、景観を維持していくには、茶葉を生産するだけでなく、梅田茶としてお茶を飲む方に広く販売することで地元特産品としてのプライドになり、梅田茶の存在を世に伝えることができます。
それはひいては、お茶畑を持っている人たちがこれからもお茶を作り続けていきたいと思えるような環境になると信じています。
併せて、二番茶以降の茶葉を使った和紅茶づくりで、梅田の景観を守る一つのお役に立てるように取り組んでいきます!
梅田茶の特徴
自分の家と親戚知人に飲んでもらうために、自分の畑から収穫した茶葉で煎茶を作り、今でも地元だけで飲み続けられている梅田茶。やぶきた品種が中心の一番茶のみを使用した煎茶です。
自家消費用だからこそ、多くの手をかけずに自然が育てた野趣あふれる爽やかな味わいです。キリっとした飲み口をお楽しみください。
急須でじっくり煎れて味わうのも良し!冷茶でガブっと喉を潤すのも良し!